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大規模コメ作り

カリフォルニア州北部のサクラメントバレー。

ここでは青々とした稲が穂をそろえています。

その上を複葉機が曲芸飛行のように旋回しています。

化学肥料をまいているのです。

見渡すかぎり人の気配はありません。

遠くに、もうもうと噴き上がる土煙が・・・。

休耕田をならすブルドーザーです。

水田の水深を一定にするためですね。

しかし、測量などしません。

レーザー塔が威力を発揮します。

高さ4メートル。

その先端から半径300ヘクタールにわたって光線が発射されるのです。

それを受けたブルの歯が自動的に上下して地面をならします。

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土地づくりから販売までコンピューター

車で近づくと、ブルドーザーの運転席の男が叫びました。

「眠くなっちゃうよ」。

運転手はハンドルを握っているだけでいいのです。

飛行機とブルを除けば、動くものは何もありません。

あとは灼熱の太陽・・・。

こんな光景をしばらくの間眺めていました。

退屈の極限に達しました。

この平野の真ん中にある小さな町、リッチベルでのことです。

この町で知り合った男性はちっとも退屈していませんでした。

アメリカ中で、恐らく、最も機械化した農場を経営する男性でした。

今、日本ではコメ輸入自由化への警戒論が盛んです。

日本の農民が最も恐れている安くてうまいカリフォルニア米の産地に飛び込んで、大規模で、ハイテクを活用したコメ作りで評判の男として紹介されたのが彼でした。

この町で最大の、1480ヘクタールの"無人農場"の一角に冷房のきいた事務所があります。

そこで毎日、コンピューターに入れた経営データのチェックに余念がありません。

土地づくりから販売までコンピューター その2

「私は農民というより企業家だ。

コメを作るだけなら造作ない。問題は販売だよ」

精米、耕作など専門分野に40人の従業員を抱え、直接土に触れる必要のない彼は、確かに企業家です。

作業には実際、ほとんど直接人手がかからないそうです。

田植えがありません。

空からモミをまきます。

刈り取りは大型コンバイン。

かんがいの水は常に豊富で、水量をチェックするだけでいいのです。

彼は自家用セスナ機で商談のためにアメリカ中を飛び回ります。

彼の兄弟の農場のコメは、独自の商標がついています。

これも最近ではすっかり定着しました。

70年ごろ始まった健康食品ブームに乗って、彼の家では精米施設を作り、玄米販売に乗り出しました。

アメリカでは農家は、モミを精米会社に売るのが普通です。

農薬の使用を最低限に抑え、自然食のイメージを売り込んだのが成功のもとでした。

「日本にもコメを売りたい」

こうした企業家的機転は、その後も働きました。

ある自然食会社の日本のポンセンベイに人気があるのをみて、早速日本から自動製造機を入れて売り出したし、その会社への無農薬米出荷を突然やめ、自社商標にしてしまったこともあるそうです。

無論、相手は腹を立てたが、生き馬の目を抜く競争社会では当たり前のこと。

彼の農場の10アール当たりモミ米収穫量は約790キロ。

アメリカではこれが平均ですが、日本の580キロを大きく上回っています。

農家売り渡しのモミ価格は100ポンド(45.3キロ)当たり7ドル(約1690円)。

日本の約4分の1です。

「日本にもコメを売りたいが、日本への輸出は、日本の農民団体を刺激して、日米間の政治問題になるというじゃないか」

問題が微妙なことは、心得ています。

しかし・・・。

「これなら日本で売れないか」と、彼がわたしにアメリカ原産の真っ黒いワイルドライスを握らせました。

一見、コメではありません。

いかにも、自然食といったかんじ。

「これなら日本の市場を荒らすことはないだろう。東京へ帰ったら調べてくれないか」

この抜け目なさが、企業としての農業を支えているのでしょう。

重役ら集めて特訓

彼は海兵隊出身らしく、あごをしゃくりながら、大声で機関銃のようにまくしたてます。

その英語には、品こそないですが、パワーを感じられます。

「その点、日本の会社には、立派なQCサークルがある」とも言いました。

しかし、欠陥品をゼロにするという、いわゆる「ゼロ・ディフェクト」=ZD理論を、彼が22年も前に打ち出した当時、これを最初に導入したのは日本のNECだったといいます。

「欠陥品は出て当然」と考えられていた時代がありました。

たとえば集積回路(IC)メーカーの場合、つい10年ほど前まで、100万個つくると、そのうち1~2万個が欠陥品になってもさして問題にされませんでした。

それが最近では、1~2千個以内になり、メーカーによっては、100個以内に近づいてきています。

それをさらに"ゼロに近い状態"にすべきというのですから、彼の主張は厳しいものです。

「クオリティーはマネジメントにあり」との信念でつくられたのが、幹部社員、重役のためのエグゼクティブ・カレッジ・プログラムです。

これは、1日びっしり8時間、まる2日間におよぶ集中講義とビデオ教育からなり、参加費はホテル代別で1人1650ドルとかなり値がはります。

IBM、GMも門をたたく

彼のあとを追って、本館2階のある教室に記者は入りました。

中西部では大手の輸送会社(従業員11000人)の副社長ら重役5人が、顔をしかめながらカウンセラーの話に耳を傾けていました。

机には、分厚い教材の山。

アメリカ人は、功成り名を遂げても、必要なときはいつでも必死に勉強するのです。

「せっかくの機会だから」と、彼が部下のカウンセラーの講義を中断して短いレクチャーを始めました。

「IBM成功物語」に話が及ぶと、会場のムードがぐっと盛り上がります。

IBMは1980年、PCAカレッジの"一期生"としてエグゼクティブたちを相次いでウィンターパークに送り込みました。

その結果、QCの考え方を根本的に変えたのです。

以来、品質向上による増収は、20億ドルにも達するといわれています。

それを見習えとばかり、GMはその年からむこう5年間で「品質を世界一にする」との戦略のもとに、PCAと長期契約を結び、幹部たちの特訓をはじめました。

それから、PCAはどのビルも、GMのエリートたちであふれんばかりににぎわったそうです。

IBM、GMも門をたたく その2

ある日、記者はGM幹部のクラスに同席したそうです。

非公開の勉強会でしたが、特別許可がおりたからです。

出席者は各地のGM工場の責任者や中堅幹部たち20人。

「5年戦略」がつねに念頭にあるのでしょう、学ぶ態度は真剣そのものだったそうです。

記者は勉強するGM幹部と接して、アメリカ車が品質の点で日本車に追いつく時代は遠くないだろう、と思ったそうです。

記者はフロリダを離れました。

ところが、数日後、GM本社から「あのクラスの内容は記事にしないでほしい」との要請が追っかけてきたそうです。

アメリカは当時まだ、日本をかなり意識していたのです。

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